取締役は法律上どのような立場にあるのでしょうか。取締役は会社と委任契約の関係にあり、株主からその経営を任され、利益をあげるために会社財産の管理運営を行います。取締役の責任には、@会社に対する責任、A第三者に対する責任、B刑事責任の3種類があります。
- 会社に対する責任
・ 善管注意義務、忠実義務
・ 違法配当
・ 利益相反取引禁止
・ 競業避止義務違反 など
- 第三者に対する責任
・ 放漫経営等によって、債権者等が被った損害に対する責任 など
- 刑事責任
・ 特別背任罪 など
以上の3種類の責任のうち、同族経営の中小企業が特に気をつけなくてはならないのは、第三者に対する責任です。商法266条ノ3条第1項は「取締役ガ其ノ職務ヲ行フニ付キ悪意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ其ノ取締役ハ第三者ニ対シテモ亦連帯シテ損害賠償ノ責任ニ任ズ」と規定しており、取締役は第三者に対して責任を負わなければならないとしています。
本来、株式会社や有限会社などは、個人と会社は別人格であるから経営に失敗しても企業経営者は、原則として自らの出資額以上の責任を負いません。しかし、商法266条ノ3により、取締役がその職務の遂行にあたり悪意又は重大な過失があれば、権利侵害や故意過失を問わず第三者に対して損害賠償責任を負うことになります。したがって、株主でなくても損害を受けたときには取締役の責任を追及する訴訟を起こすことが可能です。その場合の責任免除限度額は、代表取締役は、報酬、賞与額の6年分相当額と役員退職慰労金の6年分の合計額等(取締役は4年分)となっています。これは、取締役が高額な賠償に対して職務を行う上で萎縮しないようにとの配慮から設けられた規定です。
また、取締役の業務執行は通常取締役会の決議に基づいて行われますが、仮にそれが違法行為であった場合には、決議に賛成した取締役だけはなく、議事録で反対したと記載されていない取締役も責任を負うことになります。
商法が制定されてから平成14年の改正まで22回で取締役の責任は強化され続けています。