私の尊敬する人の一人に、租税の行政手続きや訴訟に関する法律の権威として著名な「品川芳宣」教授がおります。今年3月に筑波大学大学院教授を退官され、4月からは早稲田大学大学院の教授に 就任されます。先生は、慶応義塾大学大学院においても授業をもたれ、私も一昨年、租税行政手続法の講義を受講しました。現在でも、先生を囲み、月に一度、租税判例の勉強会に参加しています。
先生は、新潟の小千谷市の隣の町で育ち、 地元の定時制農業高校を卒業しました。当時、先生の中学生時代の同級生135名中で、普通高校へ進学したのは10名余り(なぜなら普通高校はその町にはなく、下宿生活を余儀なくされ、そのためには裕福な家庭しか行けなかったとのこと)、また、地元の定時制高校へ行けたのも20名程度だったそうです(残りの人は就職または家業を 継いだそうです)。
その後、農林省の食料事務所に就職して公務員になり、地方で働きながら勉強するために、慶応義塾大学の通信教育を受講しました。3年ほどは科目試験にパスすることだけで精一杯だったそうですが、その後、どうしても卒業したい一念で上京、税務講習所や国税局に勤務しながら、スクーリングに出席されたそうです。その後、卒業までに7年かかったそうですが、その間に、国家公務員中級、上級、公認会計士、税理士など公務員試験を3つ、国家資格を4つ、 毎年のように受けて合格しております。その後、法務省出向や国税局査察部長、各地の税務署長等を歴任され、高松国税局長を最後に退官されました。
先日、先生の筑波大学大学院教授退官パーティに出席しました。冒頭のスピーチで、言われた言葉があります。それは、新潟の定時制農業高校を卒業する時に総代として 話した内容です。
「私は、定時制という働きながら勉強をしなければならないこの環境が、自分にとって良かったのかどうかは、今後40年後に答えを出したいと思います。」
と言われたそうです。そして、この退官パーティが、折りしも40年後だったのです。答えは出たようです。現在、先生は弁護士登録もされました。